福祉読書365

福祉に関連する書籍を365冊セレクトします。「もっと良い本があるよ!」という方、ぜひ教えてください。

No.009 北條民雄『いのちの初夜』

 

いのちの初夜 (角川文庫)

いのちの初夜 (角川文庫)

 

 

 

「俺はどんな思想も世界観も信じはしない。ただ俺の苦痛だけを信じるのだ」

著者は19歳でハンセン病を発症、21歳で療養所に入所した。現代と異なり治療法も確立していなかったハンセン病の患者たちに、生きて療養所を出られるという希望は用意されていなかった。そこでは、苦痛にのたうつ患者たちのみが、自分の将来の姿であった。絶望と苦痛に塗りこめられた日々にあっては、苦痛こそが思想であり、宗教であり、生そのものとなってゆく。実際、この冒頭の言葉に対抗しうる思想や世界観が、果たしてこの世にひとつでもあるだろうか。これは、差別と隔離の過酷さを内側からえぐるように綴った稀有の一冊なのだ。