福祉読書365

福祉に関連する書籍を365冊セレクトします。「もっと良い本があるよ!」という方、ぜひ教えてください。

No.013 オリヴァー・サックス『妻と帽子をまちがえた男』

 

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

 

オリヴァー・サックスの本はどれも面白い。医師としての観察眼と、エッセイストとしての文章の巧さと、それらすべてを包み込み人間的な温かさに満ちている。扱われているのは、表面的には障害や病気の不思議さなのだが、その奥底には、人間そのものがもつ本源的な神秘へのセンス・オブ・ワンダーが横たわっている。例えば「妻を帽子とまちがえた男」は、人間の顔の認識だけができなくなった音楽家の話。確かに、妻の顔が分からなくなって帽子とまちがえてしまう姿は笑いを誘うが、一方でこの話は、「そもそもどうやって、私たちは人の顔を顔として認識していたのか」という、今まで考えたこともないような疑問に読み手を導いてくれるのである。