福祉読書365

福祉に関連する書籍を365冊セレクトします。「もっと良い本があるよ!」という方、ぜひ教えてください。

No.042 小俣和一郎『精神病院の起源』

 

精神病院の起源

精神病院の起源

 

 

 

本書は日本の「精神病院史」を辿った一冊なのだが、びっくりするのはそれが奈良時代悲田院や施薬院から始まっていること。その後も水治療、漢方治療など、登場するのは近代以前の日本における精神疾患治療の実態ばかり。明治以降の、西洋から輸入された近代医学に基づく精神病院は、本書にはほぼまったく登場しない。

 

その狙いが明らかになるのが「補章」の3章。特に「精神病治療におけるパラダイム変遷」は、日本における狂気観の系譜を明らかにし、一方「精神病院とアジール」は、精神病院のルーツのひとつがアジール(避難所)であるという補助線を引くことで、本書がこれまで取り上げてきた中世~近世日本の「精神病院」がどのようなものであったかを逆照射する。

 

日本の精神医療の歴史は、近代になって始まったわけではない。現代から見れば非科学的と言われるかもしれないが、そこには連綿と続く、宗教(特に仏教)と密接に結びついた治療の歴史があったのだ。本書は、そうした知られざる歴史に光をあてた、めったにない一冊だ。