百円読書(税別)

百円で買った本を読み、ノートします。

#9 伊坂幸太郎『ラッシュライフ』★★★

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偶然の一致というのは、小説や映画ではなかなか扱いにくい。現実では起こり得ることでも、フィクションだと「ご都合主義」と言われ、バカにされる。

伊坂幸太郎は、この「偶然の一致」を扱う名手だと思う。必然と偶然のすれすれのところを、この人は実にうまくすり抜ける。小説自体が実にスタイリッシュなので、偶然の一致自体がオシャレにさえ思えてくる。

『オーデュボンの祈り』に続く2作目とのことだが、すでに伊坂幸太郎のスタイルが確立しているのに驚かされる。どこか現実離れした世界観。軽やかなユーモアとアフォリズム。同じスタイリッシュな軽やかさでも、村上春樹が無意識にまで届く深みをたたえているのに対し、伊坂幸太郎はあくまで表面的で、意識も思考もそれほど深まらない。

でもそれが読みやすさの秘密なのだろう。どこまで連れていかれるか不安になるような深さではなく、現実離れしながらも、感覚はどこまでも現世的。前作のラストの拍子抜け感はなく、4つのストーリーが絡み合う複雑な構成ながら、それなりにしっかり着地が決まっていた。