福祉読書365

福祉に関連する書籍を365冊セレクトします。「もっと良い本があるよ!」という方、ぜひ教えてください。

No.050 大沢真理『現代日本の生活保障システム』

 

現代日本の生活保障システム―座標とゆくえ (シリーズ現代経済の課題)

現代日本の生活保障システム―座標とゆくえ (シリーズ現代経済の課題)

 

 

 

エスピン・アンデルセンの有名な福祉レジーム三類型(自由主義保守主義社会民主主義)に対して「ジェンダー」「性別分業論」の補助線を加えることで、日本オリジナルの三類型を創案した一冊。10年以上前に書かれたものだが、ここで指摘されている「男性稼ぎ主モデルの弊害」は、非正規雇用の増大によってますます現実味を増している。示されている解決法もきわめて実践的な処方箋。著者は厚生労働省社会保障審議会、内閣府男女共同参画会議影響調査専門調査会会長などに名を連ねる社会政策論、ジェンダー論の研究者。

No.049 井上理津子『さいごの色街 飛田』

 

 

さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

 

 

 

体裁はあくまで料亭。だがその実態は、あからさまな管理売春。他のどの風俗街にもまして、ホンネとタテマエ、オモテとウラが複雑に重なり合うこの「色街」を、よくぞここまで取材したものだ。10年以上にわたり、「料亭」の経営者、そこで働く女性、客として訪れる男性、ほかにも多くの関係者から広く深く話を聞き出すうちに、著者自身もまた飛田の混沌とした魅力に憑りつかれてしまったのかもしれない。面白半分のフーゾク紹介にも、お涙頂戴のドラマにもならず、現代日本の「遊郭」に真摯に向き合い、そこで生きる人々の姿をしっかりと捉えた力作ノンフィクション。

No.048 ジョック・ヤング『排除型社会』

 

排除型社会―後期近代における犯罪・雇用・差異

排除型社会―後期近代における犯罪・雇用・差異

  • 作者: ジョックヤング,Jock Young,青木秀男,伊藤泰郎,岸政彦,村澤真保呂
  • 出版社/メーカー: 洛北出版
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本
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労働環境が変わり、同じような人々を微妙な差異によって差別化する「相対的剥奪」が顕在化した。同時に起きたのは、共同体の崩壊でよりどころをなくした自己を支える、薄っぺらなナショナリズムと極端な差別主義。かくして、マイノリティを社会に再統合しようとしてきた「包摂型社会」は失われ、現代は「排除型社会」に成り果てた。「ソーシャル・インクルージョン」を学ぶには、まず「ソーシャル・エクスクルージョン」の現実を知らなければならない。現代社会の病理を的確に描写し、後期近代に向けた処方箋を提示する一冊。

No.047 雨宮処凛『14歳からわかる生活保護』

 

14歳からわかる生活保護 (14歳の世渡り術)

14歳からわかる生活保護 (14歳の世渡り術)

 

 

 

知っているかどうかが、生死を分けることがある。だがそのことを、学校も親も、ちゃんと教えようとしない。むしろ差別的に扱い、自分たちと隔て、受けることは恥だと言うこともある。だが、なんだかんだ言っても、この国の貧困対策の最後のセーフティネットは、これしかないのである。だから生活保護のことは、本当はちゃんと学校で教えるべきだ。何かあった時の保険として。そして、国民の権利として。それができないのなら、せめて本書を読ませよう。いや、まず私たち自身が目を通しておこう。この本を読んでいない中学生や高校生に、生活保護のことをきちんと説明できるように。

No.046 吉田利宏『法律を読む技術・学ぶ技術』

 

元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術[改訂第3版]

元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術[改訂第3版]

 

 

 

勝手な思い込みかもしれないが、福祉の専門職の多くは、法律を読むことが苦手であるように感じる。法律の読み方には独特のコツがあるのだが、それをわかりやすく教えてくれる本は少ない……と思ったら、そうだ、この本があった。衆議院の法制局で長年にわたり法政執務に携わっていた著者による、この上なく明快かつユーモラスな「法律読解術」。

 

No.045 スティーヴン・ジェイ・グールド『人間の測りまちがい』

 

人間の測りまちがい〈上〉―差別の科学史 (河出文庫)

人間の測りまちがい〈上〉―差別の科学史 (河出文庫)

 

 

 

人間の測りまちがい 下―差別の科学史 (2) (河出文庫 ク 8-2)

人間の測りまちがい 下―差別の科学史 (2) (河出文庫 ク 8-2)

 

 

 

ターゲットを古生物から「人間」に移し、頭蓋骨の計測から知能テストまで、差別に科学の衣をかぶせて正当化する連中に鉄槌を下す、グールド渾身の一冊。本書で紹介されるご都合主義的な解釈や恣意的な調査手法は、グールドの解説と共に読めば荒唐無稽であることがよくわかるが、もっともらしい「調査結果」や主張と一緒に示されると、ついうなずいてしまうこともあろう。差別や偏見の罠に陥らないためには、科学リテラシーや統計リテラシーを磨く必要があるという当たり前のことを再認識されてくれる一冊。

No.044 白波瀬達也『貧困と地域』

 

 

 

大阪市西成区、いわゆる「あいりん地区」の歴史を辿る一冊。特殊な地域、自分たちとはあまり関係のない場所と思われがちだが、実はここには、日本社会の問題点が先鋭的に噴き出していることに、読むうちに気づかされる。貧困。高齢化。単身生活と孤独死。ホームレス。ここにあるのは、まぎれもなく今の日本が置かれている、ひとつの現状そのものなのである。