福祉読書365

福祉に関連する書籍を365冊セレクトします。「もっと良い本があるよ!」という方、ぜひ教えてください。

No.039 三木成夫『胎児の世界』

 

胎児の世界―人類の生命記憶 (中公新書 (691))

胎児の世界―人類の生命記憶 (中公新書 (691))

 

 

 

母乳や玄米の味に遠い生命記憶をおもい、刻々変化する胎児の顔に、生命進化の痕跡をみる。生命とはどこからやってきたのか。胎児とはいったい何なのか。異色の解剖学者・三木成夫が綴る、読むうちに自分が羊水の中で宇宙を感じるような、生命リズムと「おもかげ」の生命論。

No.038 池上直己『日本の医療と介護』

 

日本の医療と介護 歴史と構造、そして改革の方向性

日本の医療と介護 歴史と構造、そして改革の方向性

 

 

 

複雑な制度。膨れ上がるコスト。日本の医療保険介護保険のしくみは、きちんと機能しているようでいて、どこかうまくいっていないようにも思える。本書は、その歴史的経緯から問題の所在、今後の展望までを、多くのデータをもとに緻密かつ丁寧に論じた一冊だ。著者は慶應義塾大学ペンシルバニア大学を経て、今は聖路加国際大学で教鞭を執る碩学

No.037 石井光太『浮浪児1945』

 

浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち (新潮文庫)

浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち (新潮文庫)

 

 

 

先日のNHKスペシャルは、戦災孤児を取り上げていた。なかなか正面きって扱われることのない、というかみんなが見て見ぬふりをしてきた問題を真正面から扱う姿勢には、NHKの矜持を感じる。もっとも、そういう「みんなが見ないことにしている」テーマをしっかり取り上げるという点については、この著者もなかなかだ。戦災孤児も、NHKより1年前に本になっている。しかもこれは、長年にわたり世界各地のすさまじい貧困を取材してきた著者ならではの視点で、近代日本における「絶対貧困」に斬り込んだ労作なのだ。主人公は、終戦直後、家族を失い、上野の地下道にあふれかえった浮浪児たち。誰もが食うだけで精一杯だったあの時代を、子どもたちはどのようにして生き延びたのか。そして、大人たちはそんな子どもたちをどのようにして支えたのか。いずれにせよ、わが国の児童福祉は、この戦後の焼け跡からはじまった。

No.036 宮本太郎『共生保障』

 

共生保障 〈支え合い〉の戦略 (岩波新書)

共生保障 〈支え合い〉の戦略 (岩波新書)

 

 

 

2009年刊行の『生活保障』で、スウェーデン・モデルを参考に新たな社会と福祉の枠組みを提示した著者が、本書では社会の分断を架橋するための方策を提示する。特に必要なのは「支える側」と「支えられる側」の重なりを作り出すこと。だがそのためには、それぞれの地域社会において、「支え合いそのものを支える」ための仕組みが必要だ。最近オリパラがらみでやたらともてはやされる「共生社会」の具体像がそこにある。それは、誰もが他の人を支えられ、同時に誰もが他の人を支える社会なのである。

No.035 押川剛『「子どもを殺してください」という親たち』

 

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

 

 

 

医療と福祉のはざまで繰り広げられるすさまじい実態の数々を、精神障害者移送サービスの現場から伝える一冊。とはいえ、多少なりとも精神障害者や引きこもりの支援に携わったことがあれば、本書の事例が決してレアケースではなく、むしろ典型的なものであることはよくご存知かと思う。入院のいわゆる「3か月ルール」の問題点も指摘されているが、家族や地域福祉の現場にとっては、これは本当に深刻で切実。特に精神科病院のMSWの方は、「退院後」に思いをいたすためにも、ぜひ本書を読んでほしいと思う。

No.034 ポール・スピッカー『貧困の概念』

 

貧困の概念―理解と応答のために

貧困の概念―理解と応答のために

 

 

 

社会福祉士試験では「貧困を「物質的必要」「経済的境遇」「社会的地位」の三側面から論じた学者」として覚えたスピッカーだが、本書を読むと、これはスピッカー貧困論のほんの入り口であることがわかる。貧困の多義性、多様性、複雑性を丁寧に論じたこの本は、貧困を単純化していないというまさにその点において、貧困問題の正統なる入門書なのだ。巻末には金子充氏による日本語書籍のブックガイドもついている。

No.033 花村春樹『「ノーマリゼーションの父」N・E・バンク-ミケルセン』

 

 

 

ノーマライゼーション」(ノーマリゼーション)という言葉を生み出し、障害者福祉を施設中心から地域中心へと大きく転換させたデンマークの行政官バンク-ミケルセン。その信念と実践に大きな影響を与えていたのは、ナチス占領下の強制収容所体験であった。ノーマライゼーションという言葉は、最近の福祉現場ではあまり使われなくなっているが、それは障害者の隔離や巨大施設での処遇などの課題が解決したからではない。ソーシャル・インクルージョンを考えるにあたっても、バンク-ミケルセンの言葉は今なお振り返るに値する。