福祉読書365

福祉に関連する書籍を365冊セレクトします。「もっと良い本があるよ!」という方、ぜひ教えてください。

No.012 権丈善一『ちょっと気になる医療と介護』

 

ちょっと気になる医療と介護 増補版

ちょっと気になる医療と介護 増補版

 

 

 

社会保障審議会や社会保障制度改革国民会議の委員でもあった著者による、経済学ベースの医療制度・介護保険制度の入門書。ともすれば政争の具となりがちな社会保障のあり方を、経済学ベースのまっとうな視点と絶妙のバランスで説く。どちらを取り上げようか迷った『ちょっと気になる社会保障』の姉妹編だ。今までの制度改革はどこがおかしく、今後はどのようにすべきなのか。歯に衣着せぬ論調・口調を通して見えてくるのは、これからの日本社会そのものの姿なのである。

No.011 柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』

 

 

 

生活保護ケースワーカーを主人公にしたマンガ。始まったころは、いったいどんな内容なのかドキドキしながら読んでいたが、ちゃんとしっかり現場目線で、バランスもしっかりとれている。よほどしっかりしたアドバイザーがついているのだろう。生活保護のみならず虐待、精神疾患、アルコール依存などについてもしっかり取り上げていて、ステレオタイプに陥っているところがないのが素晴らしい。特に5~6巻の「アルコール依存症編」はケースワーカー必読。ラスト近くの「人が変わる時には勝手に変わっていく。ケースワーカーができるのは、その人に寄り添うことだけ」というセリフに涙する人も多いのではないだろうか。ドラマ化もされるようだが、まあ、特に期待はしていない。

No.010 山口道昭・北村喜宣・出石稔『福祉行政の基礎』

 

福祉行政の基礎 (地方自治・実務入門シリーズ)

福祉行政の基礎 (地方自治・実務入門シリーズ)

 

 

 

個別具体的な福祉分野と、行政学行政法学の理論を架橋する、今までありそうでなかった一冊。著者はいずれも福祉の専門家ではない(はず)だが、行政理論から見た福祉制度の組み立てをきっちりと分類・整理しており、コンパクトながらよくまとまった良書。特に行政ケースワーカーの方は、第8章「社会福祉を支える自治体職員、行政組織」は必読。ともすれば組織の中で疲弊し、燃え尽きがちな行政ワーカーの背中を押し、折れそうな心を支えてくれる。

No.009 北條民雄『いのちの初夜』

 

いのちの初夜 (角川文庫)

いのちの初夜 (角川文庫)

 

 

 

「俺はどんな思想も世界観も信じはしない。ただ俺の苦痛だけを信じるのだ」

著者は19歳でハンセン病を発症、21歳で療養所に入所した。現代と異なり治療法も確立していなかったハンセン病の患者たちに、生きて療養所を出られるという希望は用意されていなかった。そこでは、苦痛にのたうつ患者たちのみが、自分の将来の姿であった。絶望と苦痛に塗りこめられた日々にあっては、苦痛こそが思想であり、宗教であり、生そのものとなってゆく。実際、この冒頭の言葉に対抗しうる思想や世界観が、果たしてこの世にひとつでもあるだろうか。これは、差別と隔離の過酷さを内側からえぐるように綴った稀有の一冊なのだ。

No.008 横石知二『そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生』

 

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

 

 

お年寄りがみんな元気で、バリバリ働いて稼ぐ町。そういう町があれば、どんなデイサービスよりもヘルパーよりも、それが何よりの福祉なのだと思う。そんな「理想郷」にもっとも近い地域が、本書で描かれた徳島県上勝町かもしれない。この「葉っぱビジネス」、ひところと比べてあまり目にしなくなったのはどうしたことなのか、いささか気になるところではあるが、それはそれとして、やはりこの事例はひとつのモデルケースとして、広く、長く知られるべきだろうと、読み直して改めて感じた。70歳、80歳のおばあちゃんたちが、パソコンを使って受発注をするというのも驚きなら、売り物が「葉っぱ」だというのも奇想天外。そして何より、上勝町というコミュニティと、葉っぱビジネスという経済が、みごとに融合しているのがすばらしい。ちなみにこの上勝町、最近では徹底したごみ分別のほうで有名なのだが、葉っぱと何か関係があるのかしらん。

No.007 阿部彩『子どもの貧困』

 

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

 

 

 

子どもの貧困をめぐる危機的な状況が今ほど知られていなかった10年前にあって、明確な根拠と冷静な論理で、誰にでもわかるようにその状況を解説したパイオニア的一冊。議論の展開の仕方や目配りの広さ、そして何より新書というコンパクトな容量の中に基本的な問題点と「処方箋」までをワンパッケージで揃えて見せた的確な構成は、今なお、この分野を知る上で最初に読むべき本としておススメできる。ちなみに2014年刊行の「続編」では、2013年に成立した「子どもの対策基本法」を踏まえ、本書刊行後の展開がフォローされているので、あわせてご一読を。

 

 

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

 

 

No.006 F・P・バイステック『ケースワークの原則』

 

ケースワークの原則―援助関係を形成する技法

ケースワークの原則―援助関係を形成する技法

 

 

1 クライエントを個人として捉える

2 クライエントの感情表現を大切にする

3 援助者は自分の感情を自覚して吟味する

4 受けとめる

5 クライエントを一方的に非難しない

6 クライエントの自己決定を促して尊重する

7 秘密を保持して信頼感を醸成する

 

当たり前? いまさら? でも、古典というのはそういうものなのだと思う。そして、ケースワークという比較的新しい分野において、このような古典が存在することを喜びたい。この7つの原則は、ケースワーカーが自分の方法論を確認するときに使う鏡のようなものだ。これは、得てして自己流に陥りがちな、あるいは安易な方向に流れがちなケースワーク・メソッドをあるべき姿に立ち返らせるための、基準点のようなものなのである。